アルマ望遠鏡“勝手に”応援団

■ repo 05 日・米・欧のアンテナが揃い踏み



アルマの“眼”であるパラボラアンテナは標高2900mの山麓施設(OSF)で組み立てから調整、検査、メインテナンスが行われる。アンテナは日・米・欧がそれぞれ分担して製作したが、性能や仕様は共通ながら見た目は少しずつ異なる。写真は左から米、1台おいて欧、右端が日。(写真クリックで拡大)


写真上から日米欧の順。ぱっと見、同じに見えるアンテナもよく見るとずいぶん違う



2013年3月時点でまだ組み立て中の欧州チームのアンテナ。コンテナを積み上げた組み立てエリアが特徴的



欧州チームの建屋の中では、アンテナの鏡面を組み立て中。非常に高い精度が求められるため、作業員の表情も真剣



こちらはアンテナ架台の組み立て。縦と横の回転はリニアモーターで行う。日本も同じだが米国は通常のモーター

 アルマ望遠鏡は、日・米・欧による国際プロジェクト。望遠鏡本体であるパラボラアンテナもそれぞれが分担して製作した。分担といってもアンテナのお皿部分とか架台部分とかではなく、パラボラアンテナ丸ごと1台、各地域で担当する台数を製作する。共通の仕様に基づいて欧米が各25台(直径12mアンテナ)、日本が16台(12m4台+7m12台)が割り当てだが、電波望遠鏡としての性能や仕様が満たされれば、材質やデザインはある程度任される。そのため、日米欧でアンテナの見た目も微妙に異なる。
 製作方法もそれぞれ違い、欧州は山麓施設(OSF)に部品を持ち込んで組み立てたのに対し、日本はある程度国内で組み上げてからチリまで運んだ。当然、OSFでの製作エリアの様子も各地域で異なり、米国チームは大きな建屋の中で組み立て、欧州はコンテナを積み上げて囲い設けている。
 2013年3月の開所式で訪れた際には日米のアンテナはすべて完成していたが、欧州分はまだ数台製作中で、その様子を見学することができた。そのうちの1台はアンテナの鏡面を組み立て中だったが、日本チームは同じ作業なら国内で行っている。


山根一眞「以前、OSFを訪ねた時は欧米ともガードが固くて見学できなかったけどね」
編集担当S「日米とも担当するアンテナすべてが完成したので、隠す必要もなくなったらしいです」
山根「欧州はずいぶん遅れてるからなあ」
編S「日本のスタートは欧米に2年遅れたのに、最初にアンテナが出来上がったのは日本でした」
山根「そうそう。日本の年度会計のせいという声もあるけど、やっぱり技術力がすごいんだよ。どんなもんだ」
編S「て、山根さんが威張ることでもないと思いますけど」


 日本はパラボラアンテナの“お皿”部分や台座部分も国内で組み上げた。かなり大きなパーツとなるため、それをチリまで運ぶのは船しかない。神戸港を出た船は太平洋を越えて地球の裏側へ。アタカマの最寄りの港に陸揚げされたあとは大型トレーラーでOSFまで、本サイトの「repo02」でも紹介した、あの道を車列を組んで運ばれた。
 大きなパーツでOSFに運び込んだ日本チームは、当然ながら組み上げるのも早い。大きな荷物が届いたと思ったら、あっという間に出来上がった日本のアンテナに、欧米チームは目を丸くして驚いたらしい。


編S「アンテナを旋回させるのも日欧と米国では違ます。精度とかスピードとか同じなんですかね?」
山根「そりゃあ、求められる機能とか精度は一緒だからね、旋回性能も同じだよ」
編S「性能は同じでも、作り方もデザインも違うというのは面白いですね」
山根「デザインは欧州チームのはすっきりしていて職人技的、米国のはいかにも工業製品という感じかな」
編S「日本のアンテナは“ガンダムみたい”という人もいるそうです」
山根「確かに曲線と直線の使い方なんかはガンダム的かもしれないね」
編S「見せて貰おうか。連邦軍のモビルスーツの性能とやらを!」
山根「?」
編S「あ、聞かなかったことにしてください」

「アルマ望遠鏡」について詳しくお知りになりたい方は、以下のサイトもご覧ください。

>自然科学研究機構 国立天文台「アルマ望遠鏡」

>ALMA天文台(英文)

>現地報告!構想30年のスーパー望遠鏡「アルマ」がついに動き出す(日経ビジネスONLINE)





『スーパー望遠鏡
    「アルマ」の創造者たち』


著者名:山根一眞
体裁:四六判・並製、296頁
価格:1,620円(税込)
ISBN:978-4-86443-042-5
発行日:2017年7月31日
発行元:日経BPコンサルティング
発売元:日経BPマーケティング

【目次】
序章  嵐の神戸港
第1章 電気仕掛けの望遠鏡
第2章 野辺山のサムライたち
第3章 奪われた花嫁
第4章 魔法工場のデスマッチ
第5章 凧揚げとガンダム
第6章 冷たいラジオの作り方
第7章 天空のセレモニー
終章  奇跡の星、地球

■著者プロフィール
山根 一眞(やまね・かずま)

ノンフィクション作家。1947年東京生まれ、獨協大学外国語学部ドイツ語学科卒。宇宙航空研究開発機構(JAXA)客員、福井県文化顧問、理化学研究所相談役、日本生態系協会理事、3.11支援・大指復興アクション代表。日本の「ものつくり」を広く伝えた『メタルカラーの時代』シリーズ(小学館)は25冊を出版。『小惑星探査機はやぶさの大冒険』(マガジンハウス)は渡辺謙主演で映画化。『日経ビジネスONLINE』で2つの連載コラムをもつ。獨協大学特任教授。日本文藝家協会会員。
■主な著書
『理化学研究所』(講談社ブルーバックス) 2017年、『小惑星探査機「はやぶさ2」の大挑戦』(講談社ブルーバックス) 2014年、『メタルカラー烈伝 温暖化クライシス』(小学館) 2006年、『メタルカラー烈伝 鉄』(小学館) 2008年
山根事務所
 http://www.yamane-office.co.jp