アルマ望遠鏡“勝手に”応援団

■ repo 06 困難極めた受信機開発



電波望遠鏡において最重要部品のひとつが受信機。アルマ望遠鏡では観測する周波数帯(31.5〜950GHz)を10に分け、それぞれの受信機の開発・製作を日米欧で分担した。日本の担当はバンド4、8、10で、それらは66台すべての望遠鏡に搭載される(写真クリックで拡大)


BSアンテナなどの場合、受信機はパラボラの正面、焦点を結ぶ位置にあるが、アルマ望遠鏡はここで再度反射させる。受信機はパラボラアンテナの後ろ側



OSF(山麓施設)で調整中の受信機ユニット。8台の受信機はまとめて1つの容器(クライオスタット、青い部分)に収められている



クライオスタットに搭載された受信機。手前の丸いベースだけが見えるところが未搭載のバンド1と2が収まる部分。その間にあるのが日本が担当したバンド10、その右上がバンド8、容器の左端がバンド4



日本の国立天文台でアンテナへの搭載を待つバンド10受信機



受信機をメインテナンスする際、クライオスタット内を真空冷凍状態に保つ必要があるため、山麓施設とアンテナとの間の運搬は専用のトラックを使う

 はるか遠い宇宙のかなたから届いた電波はパラボラで集められ、それを受けるのが受信機だ。アルマ望遠鏡は観測する周波数は31.5〜950GHz。この帯域を1台の受信機では受信できないため、10の周波数帯域(バンド)にわけてそれぞれに対応する受信機を使って観測する。
 パラボラアンテナの製作は日米欧で台数分担だが、受信機はバンドで分担。各チームが作った受信機は1つの容器に収められ、66台すべてのアンテナに搭載される。
 日本の担当はバンド4(125〜163GHz)、バンド8(385-500GHz)、バンド10(787〜950GHz)。なかでも最も高い周波数帯であるバンド10の開発は困難を極めた。特に受信機の心臓部でもある超電導素子では、この周波数帯では従来の超電導素材が使えないため、新たな素材の開発から行う必要があったのだ。
 ちなみに超電導素子を用いるため、観測中は受信機部分を4K(マイナス269℃)に保つ必要がある。そのためクライオスタットと呼ぶ真空冷凍容器に受信機を収めている。このクライオスタット内を常温から4Kまで下げるためには数日を要するそうだ。


山根一眞「この受信機開発は、とても大変だったそうだよ」
編集担当S「欧米の専門家でさえ“日本ではできっこない”と言っていたそうですね」
山根「そうそう。でも出来た。しかもメーカーに発注して作らせたのではなく、国立天文台が中心になって開発から製作まで行っているんだよね」
編S「三鷹の国立天文台には半導体を作るようなクリーンルームもあります」
山根「日本の技術力、技術者魂は素晴らしい。本気になれば凄いものが作れる。どんなもんだ」
編S「ここも、山根さんが威張ることではないと思いますけど。でも気持ちは分かります」


 サブミリ波を観測する電波望遠鏡では、受信機に超電導SISミキサーという素子を用いる。ここに用いる超電導素材としては従来からニオブ(Nb)が使われてきた。しかしNbの場合、周波数が700GHz以上になると超伝導状態が壊れ始めて回路の中で抵抗になってしまう。そのため、バンド4、8では使えたNbが使えず、新たな超電導素材の開発が必要になった。
 そんなときに注目したのが、1THz(1000GHz)以上でも超電導が壊れない窒化ニオブチタン(NbTiN)だった。情報通信研究機構の力も借りて、開発が最も難しいとされてきたバンド10受信機開発に成功したのだった。


山根「今回はいつもと違って内容が専門的でレベルが高いねえ。難しい話だけど理解できたの?」
編S「いえ、ぜんぜん。取材で聞いた内容をそのまま書いただけなので」
山根「なんだ、レベルが高いなんてほめるんじゃなかったな」
編S「でもそうした難しい話は、山根さんが書籍でやさしく分かりやすく書いていただけるはずですから、大丈夫」
山根「うっ(汗)」

「アルマ望遠鏡」について詳しくお知りになりたい方は、以下のサイトもご覧ください。

>自然科学研究機構 国立天文台「アルマ望遠鏡」

>ALMA天文台(英文)

>現地報告!構想30年のスーパー望遠鏡「アルマ」がついに動き出す(日経ビジネスONLINE)





『スーパー望遠鏡
    「アルマ」の創造者たち』


著者名:山根一眞
体裁:四六判・並製、296頁
価格:1,620円(税込)
ISBN:978-4-86443-042-5
発行日:2017年7月31日
発行元:日経BPコンサルティング
発売元:日経BPマーケティング

【目次】
序章  嵐の神戸港
第1章 電気仕掛けの望遠鏡
第2章 野辺山のサムライたち
第3章 奪われた花嫁
第4章 魔法工場のデスマッチ
第5章 凧揚げとガンダム
第6章 冷たいラジオの作り方
第7章 天空のセレモニー
終章  奇跡の星、地球

■著者プロフィール
山根 一眞(やまね・かずま)

ノンフィクション作家。1947年東京生まれ、獨協大学外国語学部ドイツ語学科卒。宇宙航空研究開発機構(JAXA)客員、福井県文化顧問、理化学研究所相談役、日本生態系協会理事、3.11支援・大指復興アクション代表。日本の「ものつくり」を広く伝えた『メタルカラーの時代』シリーズ(小学館)は25冊を出版。『小惑星探査機はやぶさの大冒険』(マガジンハウス)は渡辺謙主演で映画化。『日経ビジネスONLINE』で2つの連載コラムをもつ。獨協大学特任教授。日本文藝家協会会員。
■主な著書
『理化学研究所』(講談社ブルーバックス) 2017年、『小惑星探査機「はやぶさ2」の大挑戦』(講談社ブルーバックス) 2014年、『メタルカラー烈伝 温暖化クライシス』(小学館) 2006年、『メタルカラー烈伝 鉄』(小学館) 2008年
山根事務所
 http://www.yamane-office.co.jp