アルマ望遠鏡“勝手に”応援団

■ repo 07 100t超のアンテナ運ぶ“ムカデ”



アルマ望遠鏡の運搬に使われる専用のトランスポーター(運搬車両)、通称“ムカデ”。2013年3月の開所式当日、列席者へのお披露目として式典会場のそばに、欧州のアンテナを載せて展示された。この写真はその時のもの(写真クリックで拡大)


グーグルアースによるOSFの全景。中央の円形に見えるところがメイン施設で、コントロールルームやメンテナンスルームなどがある。右手がそれぞれのアンテナ組み立てエリア。上から欧・日・米で並んでいる



ムカデは上から見ると「コ」の字型で、中央にアンテナを挟んで斜めに持ち上げて運ぶ。そばに立つ人と比べると、その巨大さが分かる



こちらが前。運転席は車体にぶら下がる格好だ。700馬力のエンジンを2基搭載する



アンテナをパッド(基礎)へ正確に設置するため、運転者が外に出てリモコンで操縦できるようになっている



ムカデの下に潜り込んでみた。アンテナはこんな感じで持ち上げられる

 OSF(山麓施設)にある日米欧それぞれのエリアでアンテナが組み立てられると、管理棟横のスペースに移され、ここでさまざまな性能チェックが行われる。これをクリアするといよいよ5000mの山頂エリアに設置されるわけだが、これらの運搬に使われるのが専用のトランスポーター(運搬車両)、通称“ムカデ”だ。組み立てられたアンテナの重さは1台で100t以上。それを持ち上げて標高差2100mの山頂まで運ぶわけだから、相当な力持ちである。
 このムカデ、当然ながらアルマ望遠鏡のためだけに作られた特注で、2台用意された。プロポーションは幅10m、長さ20m、高さ6m。片側7軸14輪、合計28本のタイヤを備えるその姿が、ムカデと呼ばれるゆえんだ。各軸はそれぞれ単独で向きを変えることができるため、前進後退のほか横への移動やその場での転回なども可能だ。アンテナを所定の位置に高い精度で設置するためには、こうした機動性が不可欠である。運転者が外に出てリモコンで操縦することができるのもそのためだ。
 700馬力のディーゼルエンジンを2基備えるが、5000mまで上がると空気が薄くなるため、平地の2/3くらいしかパワーが出なくなるという。


山根一眞「このムカデはすごいね。実際にアンテナを山頂へ運搬するところが見たかったな」
編集担当S「山根さんが出演した番組(テレビ東京系列『未来世紀ジパング』)では映像が流れましたけどね」
山根「いやいや、実物を見ないとその迫力はなかなか感じられないよ」
編S「ですね。なにせ、700馬力といえばF1のエンジン並み、それが2台分ですからかなりの迫力でしょう」
山根「おー! F1が2台か。そりゃ、相当速いだろうね」
編S「いやいや、スピードは出しません」


 さすがにこの手のマシンには、高速走行性能は求められない。それでもアンテナ運搬時は12km/h、空荷なら20km/hまでくらいは出るらしい。
 製作はドイツの「SCHEUERLE」社。この会社は特殊車両の世界ではかなり著名なメーカーだが、中でも重量物の運搬が得意分野のようだ。HPを見てみると、鉱山で使われるような超大型の掘削機械や風力発電のプロペラなどを、数え切れないほどのタイヤがついた台車に載せた写真や動画が公開されており、男の子ならその迫力に釘付けになること間違いなし。


山根「…………」
編S「山根さんも釘付けですか(苦笑)」
山根「こりゃ乗り物マニアにはたまらんね。今回は天文ファンだけじゃなく乗り物好きにもウケるんじゃない?いつもよりページビューが多くなるな、きっと」
編S「なるほど。いわゆるコラボレーション企画ですね」
山根「そうそう。例えば最近は鉄道ファンが増えてるらしいので、そっちも狙ってみたら?」
編S「そういえば野辺山の45mアンテナを移動させるところなど、鉄道ファンは大喜びしますね」
山根「いや、それはマニアック過ぎるよ」

「アルマ望遠鏡」について詳しくお知りになりたい方は、以下のサイトもご覧ください。

>自然科学研究機構 国立天文台「アルマ望遠鏡」

>ALMA天文台(英文)

>現地報告!構想30年のスーパー望遠鏡「アルマ」がついに動き出す(日経ビジネスONLINE)





『スーパー望遠鏡
    「アルマ」の創造者たち』


著者名:山根一眞
体裁:四六判・並製、296頁
価格:1,620円(税込)
ISBN:978-4-86443-042-5
発行日:2017年7月31日
発行元:日経BPコンサルティング
発売元:日経BPマーケティング

【目次】
序章  嵐の神戸港
第1章 電気仕掛けの望遠鏡
第2章 野辺山のサムライたち
第3章 奪われた花嫁
第4章 魔法工場のデスマッチ
第5章 凧揚げとガンダム
第6章 冷たいラジオの作り方
第7章 天空のセレモニー
終章  奇跡の星、地球

■著者プロフィール
山根 一眞(やまね・かずま)

ノンフィクション作家。1947年東京生まれ、獨協大学外国語学部ドイツ語学科卒。宇宙航空研究開発機構(JAXA)客員、福井県文化顧問、理化学研究所相談役、日本生態系協会理事、3.11支援・大指復興アクション代表。日本の「ものつくり」を広く伝えた『メタルカラーの時代』シリーズ(小学館)は25冊を出版。『小惑星探査機はやぶさの大冒険』(マガジンハウス)は渡辺謙主演で映画化。『日経ビジネスONLINE』で2つの連載コラムをもつ。獨協大学特任教授。日本文藝家協会会員。
■主な著書
『理化学研究所』(講談社ブルーバックス) 2017年、『小惑星探査機「はやぶさ2」の大挑戦』(講談社ブルーバックス) 2014年、『メタルカラー烈伝 温暖化クライシス』(小学館) 2006年、『メタルカラー烈伝 鉄』(小学館) 2008年
山根事務所
 http://www.yamane-office.co.jp