アルマ望遠鏡“勝手に”応援団

■ repo 08 ここは地球?火星?



標高5000mのチャナントール高原に設置されたアルマ望遠鏡。ここを中心に、最大で直径約18kmという広大なエリアに66台のアンテナが設置される。右手の建物は観測技術棟。アンテナで受けた電波を解析する相関器など機器類が設置されているほか、万が一のための医務室なども備わる(写真クリックで拡大)


OSF(山麓施設)からAOS(山頂施設)方向を望む。アンテナがあるAOSまでは正面の2つの山の間を通ってさらにその向こう、OSFから距離にして約30km、標高差は2000mある。専用道路はダートだが、アンテナを積んだ“ムカデ”が走る道路でもあるため、意外に快適



AOSに到着。スマホの高度計アプリで標高を見てみると、ちゃんと5000m(右の小さいほうの数字、左はフィート)を超えていた。実際にAOSのアンテナが設置されている辺りは5050mほどとか



少し離れた場所からAOSを眺める。5000mまで来ると草木はなくなり、空が赤ければ火星かと思うほど、荒涼とした風景が広がる。右奥の高い山はチリとボリビアの国境にそびえるリカンカブール山。標高は5916mで、その姿から“アタカマ富士”とも



夕日に照らされるAOSアンテナ群。夕方といってもこの時点で夜の8時過ぎ。9時過ぎないと暗くならない



OSFからAOSに向かう道すがらで出合った動物たち。上2点はコンドル。右下は野生のビクーニャ。アルパカやリャマなどと近縁で、ラクダ科に属するらしい。下左は4000m付近で草をはむロバ。野生?家畜?


 いよいよOSF(山麓施設)からアンテナが設置されたAOS(山頂施設)に向かう。OSF〜AOS間はシャトル便のバンがあるらしいが、われわれは2台のピックアップに分乗。酸素量が平地の1/2という5000mまで上るため、クルマには酸素ボンベと大量の水を積み込む。AOSまでは専用道路で約30km、標OSFとの標高差は2100mある。この道はアンテナを積んだ例の“ムカデ”も走行するため、砂利道ながら道幅は広くカーブも緩やかだ。勾配もそれほどではないため、窓外の景色を眺めながら快適なドライブが楽しめる。
 OSFを出て少し走ると、3000mを過ぎたあたりから西部劇で見たようなサボテンの群生地が現れる。訪れた11月はちょうど開花時期で、人の背丈の数倍はありそうなサボテンにかわいらしい小さな花を付ける。4000m付近ではロバがのんびり草をはみ、4500m近くでは野生のビクーニャの群れに出会った。運がよければ、チリの国鳥でもあるコンドルに出くわすこともある。超乾燥地帯ではあるが、意外に動植物は豊富だ。


山根一眞「連載8回目でようやく山頂か。ずいぶんかかったね」
編集担当S「慌てて高いところに上ると高山病になりますから。読者のみなさんも息苦しくなると思って」
山根「いやいや、それは関係ないよ。ところで、コンドルに会えたんだ?ラッキーだったね」
編S「まあ、この辺りではそれほど珍しいわけではないらしいですけどね」
山根「ずいぶん至近距離で写真撮れてるじゃない?」
編S「ちょうど目の前に降りてきたんですよ。感動モノでした」
山根「はは〜ん、そりゃ、おなかがすいて、キミらの肉を狙って降りてきたな」
編S「ええ〜っ?僕ら、ヤバかったってことですか?」
山根「ウソウソ、大丈夫。ヤツらは生きた動物は襲わず、死肉を狙うんだよ」
編S「ええ〜っ?てことは、僕らは死肉に見えたってことですか?(泣)」


 のんびりした景色も、5000m近くまで来ると一変。赤茶けた土、ゴツゴツした岩だらけの荒涼とした風景が広がり始める。山道が平坦路に変わるころ、左手にパラボラアンテナが見えてくる。お、いよいよアルマ望遠鏡か、と思ったら違った。欧州南天天文台(ESO)が2005年に設置したAPEX望遠鏡だった。それでも、ここまでくればASOはもうすぐ。まもなくアンテナ群が見えてくる。OSFからここまで40分ほど。すでに5000mエリアだが、息苦しさや頭痛などは感じられない。ただ、なんとなく空気が薄い感じはある。深く息を吸っても、空気があまり入ってこないような……。
 ちなみに山頂への運転は、資格を持ったドライバーしか許されない。われわれのような訪問者も、事前に血圧や血中酸素濃度測定などドクターチェックは必須。クルマで割と簡単に上れてしまうが、だからこそ高度順化が間に合わず、重い高度障害を発症する場合もあるという。5000mを侮るべからず。


山根「侮っていたわけではないけれど、5000mは辛かったなあ〜」
編S「山根さんは頭痛がしてたって言ってましたね。僕らは平気でしたけど」
山根「頭痛はそんなにひどくはなかったんだが、ずっとボ〜っとする感じ」
編S「それでも相当なカット数の写真を撮ってましたよね」
山根「そうそう。でもね、何の写真を撮ったのか思い出せないのもあるんだ」
編S「……それは、標高のせいではないんじゃないかと」


「アルマ望遠鏡」について詳しくお知りになりたい方は、以下のサイトもご覧ください。

>自然科学研究機構 国立天文台「アルマ望遠鏡」

>ALMA天文台(英文)

>現地報告!構想30年のスーパー望遠鏡「アルマ」がついに動き出す(日経ビジネスONLINE)





『スーパー望遠鏡
    「アルマ」の創造者たち』


著者名:山根一眞
体裁:四六判・並製、296頁
価格:1,620円(税込)
ISBN:978-4-86443-042-5
発行日:2017年7月31日
発行元:日経BPコンサルティング
発売元:日経BPマーケティング

【目次】
序章  嵐の神戸港
第1章 電気仕掛けの望遠鏡
第2章 野辺山のサムライたち
第3章 奪われた花嫁
第4章 魔法工場のデスマッチ
第5章 凧揚げとガンダム
第6章 冷たいラジオの作り方
第7章 天空のセレモニー
終章  奇跡の星、地球

■著者プロフィール
山根 一眞(やまね・かずま)

ノンフィクション作家。1947年東京生まれ、獨協大学外国語学部ドイツ語学科卒。宇宙航空研究開発機構(JAXA)客員、福井県文化顧問、理化学研究所相談役、日本生態系協会理事、3.11支援・大指復興アクション代表。日本の「ものつくり」を広く伝えた『メタルカラーの時代』シリーズ(小学館)は25冊を出版。『小惑星探査機はやぶさの大冒険』(マガジンハウス)は渡辺謙主演で映画化。『日経ビジネスONLINE』で2つの連載コラムをもつ。獨協大学特任教授。日本文藝家協会会員。
■主な著書
『理化学研究所』(講談社ブルーバックス) 2017年、『小惑星探査機「はやぶさ2」の大挑戦』(講談社ブルーバックス) 2014年、『メタルカラー烈伝 温暖化クライシス』(小学館) 2006年、『メタルカラー烈伝 鉄』(小学館) 2008年
山根事務所
 http://www.yamane-office.co.jp